幼稚園 8 神様のタマゴ

二度と幼稚園には行かないと誓ったくらい嫌いな幼稚園にも
そうそう悪くない思い出もある
キンダーブックが届き、ボロボロになるまで見た
 
自転車にはねられて休んでいたある日 
父;、幼稚園に行かないか
;幼稚園は行かない
父;タマゴがもらえるよ
;タマゴならウチにたくさんある
父;ウチの卵は白いけど 色のついたタマゴがもらえるよ
;どんな色
父;赤や青や桃色
 
の頭は色とりどりの卵でいっぱいになる
 
しかし、それが日曜だと知って 
;教会は行かない
父;教会は行かなくていい、

タマゴを貰ったら帰ってくればいい

;じゃあ、行く
 
はさかなだ タマゴに釣られるあわれなさかな
 
いざ行った幼稚園
登校拒否生徒には 先生はやさしいと相場が決まっている
誰と話した記憶もなく 何をしたかも覚えていない
青いタマゴをもらって帰った
 
青いタマゴはゆで卵だそうだ
手の中で転がしては色を楽しむ
 
しばらく眺めては 手に中で転がす
 
痛むから食べなさいといわれたって 
なかなか決心がつかない
 
青いタマゴは 何度見ても変わることはない
見あきるほど眺めて やっと食べる決心がついた
 
・・・・・・・・
普通のタマゴだ
 
やっぱり神様はうそつきだ
・・・・・・・・・
 
中まで真っ青だったら きもちわるいだろ・・


それは大人の 常識

幼稚園 7 約束は嘘つきの始まり

大人はずるい
「約束」というモノをきっちり教えておきながら
「約束」をタテにおどす
理不尽な約束は「うそつき」の原点だ
・・・・・・・・・・

幼稚園は世間を知らない純粋な心にはちょっと刺激がありすぎた

直接のきっかけは全く記憶にない
七夕は行ったのだから
夏休みが終わってから行かなくなったのではないだろうか
いつしか幼稚園には行かなくなっていた
まぁ 自然の成り行きというもので
わざわざみじめになるような環境に行きたいわけがない

幼稚園の担任は 一人でも生徒が減っては困のか
毎月「キンダーブック」をもって集金にやってくる
母がやめます というと父を呼び出し
やめないように交渉する
父はそのうち面倒になったのか、
家にいられては困るからやめさせたくないのか
子どもの知るところではない

毎月バカ高の「キンダーブック」が届く

しょっちゅう繰り返す やめる やめない も
いいかげん担任だってイヤになったのだろうか

担任は☆と直接話がしたいと言って動かない
当然☆は会いたくないから断る
それでも頑張って帰らない

それを何度も繰り返す


ある日、いつまでも居座る先生にとうとう母が折れた

母;先生が会いたいと言って帰らないから出て行きなさい
☆;会いたくない
母;出て行って自分ではっきり決めなさい
そうしないといつまでも帰らないよ。
母は☆の味方だ、よし。

先生;幼稚園にいらっしゃい
☆;・・・・・
先生;幼稚園はたのしいから
☆;・・・・・
先生;明日来ますね
☆;いかない
先生;どうして、明日は○○があって・・・
☆;いかない
先生;くればたのしいから
☆;もういかない
先生;ね、待っているから 来るって約束して
☆;やだ

行くという約束だけはどうしてもするわけに行かない
それだけははっきり断らないと
「約束したでしょう」と うそつきだといわれる
約束を破ると神様がどうのこうの
神様はいじめることしかしない

軽はずみな約束がどういう結果を生むか
教えたのはあなたでしょう
明日も来る と約束させて
毎日毎朝シールが貼れないと叱る

下校時の約束と 朝のお叱り
約束さえしなければ 行かなくてもよい
約束さえしなければ 叱られることもない

さかなじゃない 餌なんかで釣られるものか
先生とは ぜーったい 約束しない

幼稚園 6 父の魔法1 紙の不思議

楽しくない思い出ばかりの幼稚園で
たった一度だけ 良かったことがある

正確には幼稚園が良かったのではない
・・・・・・・・・・

七夕飾りを作る日がきた
いろんな飾りをつくったらしい

そのころには心も抵抗しなくなっていた。
しなさいといわれたことをするだけ
みんなが笹を囲んで飾っていても
☆には関係ない 大きなささを見て
それだけですごいと思うようになっていた
さわってみたいと思うことも 近づくことも
自分のすることではない
ただ部屋の隅に立っていればいい
うらやましいという思いの記憶すらない

部屋には大きな笹がざわざわしていた
子供たちはその下で遊んでいる
遠めに眺めながら、家で飾ることを考えていた

幼稚園が☆に求め、教育したことは
目立たないこと 邪魔にならないこと
自分が邪魔な存在だと自覚すること

色とりどりの 山のような色紙
☆は黄色が好きだ けど 関係ない

教わったことは
与えられた青い色紙で輪をつなげなる方法と
与えられた青と桃色の三角を交互に糊付けする
それが☆のすること
☆の短冊は先生がつけたのだろう

そもそも☆の短冊は存在しないのかもしれない

だって自分で飾らないのだから

それでも飾り作りは楽しい
紙が立体になるのはたいへん面白かった

家に帰って父に紙をもらった
父は学習塾をしていたので西洋紙ならいくらでもある

そして父は

☆がおとなしく夢中になることはとても丁寧に教える

長方形の西洋紙の一端を三角に折り、
はみ出したところを切ると正方形になる
すばらしい! これならいくらでも折り紙がつくれる
父の仕事は丁寧で仕上がりがきれいだ
さっそく☆も挑戦する
上手くはいかないがうれしい

その紙をさらに小さくし 輪を作った
父はつなげないでどんどん輪を作る
輪はふわふわはねながら山になっていく
もう見るのに夢中だ

次に別な紙で山になった紙をつなげ始めた
なんと効率の良いこと
一緒になってつなげた

父は☆が軌道に乗ると 正方形を作った紙の
残りの部分を細く切り、ひねって輪を作った

魔法だ !
紙の輪は生きているようだ すばらしい !
それもつないでながーい飾りができた

父は新しい紙を取り出し
魔法を見せてくれるという

父;ここに紙が一枚
☆;かみがいちまい
父;これを真四角に切る
☆;うんうん
父;これを三角に折る
☆;さんかくにおる
父;もう一回三角に折る
☆;もういっかいさんかくにおる
父;またまた三角に折る
☆;ちっちゃくなりました
父;さて ハサミでチョン
☆;ちょん
父;こちらもチョン
☆;ちょん
父;この辺も
☆;ちょん
父;最後に 魔法の息をかけて ふーッ
☆;ふーっ

もったいぶって丁寧に開いた父の手からは
母が編むレースのような美しい模様が出てきた

すっかり魔法にかかった☆は とりこである
真四角を作るために三角にエネルギーを注ぎ
美しい模様にするために ハサミを使いこなすべく
一生懸命練習した

魔法の 「ふーっ」 もちろん忘れない

父が三角を選んで、なおかつ
面白おかしくしたのには理由があるわけで
後からおもえば見えてくる

西洋紙を使う以上 正方形はジマエになる
☆が紙遊びをしたいというたびにいちいち
やらされてはたまったものではない
それに飾りでは色紙がほしくなる、間違いない
おまけに立体のゴミが山とでる
この遊びなら家にある紙で足りるし、いちおう芸術作品だ

父の魔法にたやすくかかり
そっくり吸収した姉にも引っかかり

それで楽しかった

七夕飾りはどうなった??

幼稚園 5 教会は地獄

キリスト教の幼稚園だったので日曜学校がある
入園してすぐに行くわけではなく
これもなれてから なのだろう
・・・・・・・・

初めて日曜学校に行く日
姉が休みだというのに私は出かけた

いつものように玄関を入り部屋に行く
全員並ばされて
まだ足を踏み入れたことのない、
暗い廊下に連れて行かれた。

瞳孔が動かないから(そんなことはもちろん知らない)
暗いところでは足元が見えない
おまけに床ではなく 渡り廊下ですのこがひいてある
平らとわかっていればいくらでも歩けるのだが
すのこは経験がない
乗って安全だという認識がない
その上 すのこの高さがわからない
どのくらい足を上げたら上手く乗れるかがわからない

こわい

行列はまた 私で ストップしてしまう
叱られて こわごわ なんとか前に進んだ
少し行くとすのこが切れて 次のすのこに移らなくてはならない

また止まる
また叱られる

数回繰り返してやっとすのこになれてきた

教会に入る入り口はとても高さがあるらしい
先生は先に立って教会に入っていった
園児はピョンピョン 先生の跡を追いかけ入っていく
うしろの園児たちが追い越して消えていく
とうとう おいていかれた

どうにも怖くて前に行けない
すのこからの距離も高さもわからない
暗い廊下に たった一人残って座り込む

敷居が高い? 意味が違う・ヨネ!

担任が来て引っ張られて教会に入った
どうやって上がったか覚えていない
次から次と新しいことで
いちいち通り過ぎたことにぐずぐずしていられない

 

教会は美しかった

暗い廊下から一歩入ると そこは明るく
白っぽい床に赤いじゅうたんが長くのびて
椅子がたくさん並んでいた
天井は高く 上まで窓がある

天井近くのガラスには色がついている

色ガラスって初めて見た

正面(祭壇)は見えないけれども なにやらまぶしく美しい

美しい

美しさに見とれていると現実につかまれた
強く引っ張られ 椅子に座らされる

何にでも興味があって
先ほどの敷居の高さは もうどうでも良かった
記憶から消えないからずっとあとで振り返るので
常に 今 だけで忙しい

延々とつまらない時間が過ぎて
園児の名前が次々と呼ばれ
呼ばれた園児は前に行き 何かをする

それを一人でしなければならない

とたんに不安になった
その不安は今でも震えるほど覚えている
その後の屈辱とともに忘れられない思い出だ

名前が呼ばれて 立った
どこに行ったらいいかわからない
ただただ 立つ
もう一度呼ばれる
動けない

前に来るようにいわれて 前のほうに行く
美しい赤いじゅうたんの上を歩いているのに
そのじゅうたんはどす黒く先がない
イスのないところまで出た
たった一人立って 何をしたらいいかわからない

ただただ時間が流れる
叱られる時間を待っている
祭壇は 相変わらず見える距離ではない
ただピカピカ光っている
どっちをみても誰も 声を くれない

手を合わせて膝を突きなさい
とうとうどこからか声がした
いわれるままやったのだろう
牧師が 正確には 衣が近づいてきた
他人の映像のような記憶だ
何が行われたのか知らない
何の言葉も記憶にない

ただ どす黒いじゅうたんと 縁取りの黄色い線
石のような世界
そのうちに席に戻るようにいわれた

自分の席がどこにあるかわからない
うしろを振り返り 一歩すすんでは 止まる

もしかしたら ここ?
誰も何も言わない

じゃ ここかもしれない
シーン

次かもしれない
・・・・・

一列ごとに止まっては誰かが止めてくれるのを期待した
期待は外れ 誰も声を掛けてくれない

教会はバカ広く 冷たい 地獄だ

二度と来ない!!

一列ごとに止まっては待つ
また止まっては待つ
いくら繰り返しても 誰も声をかけてくれない
うしろのドアが見えてきた

例のごとく担任が 待ってましたと、かどうかは定かでないが
悪態をつきながら引っ張りに来た
「自分の席くらいちゃんと覚えなさい
私が恥ずかしい思いをさせられます」
イスの列まで連れて行き さっさと戻ってしまった

この列の何処に座ったらいい?

再び現れた先生、今度は はっきりと
「どうしようもない生徒を持つと恥ずかしいわ」」
大勢の前で馬鹿にされ 引っ張られて席につく

自分の席も覚えられない バカな生徒を持たされ
恥じをかかされる生徒にうんざりなのだ

それっきり二度と教会には行かなかった

もしかしたら 何回かは家を出た
日曜日は幼稚園に行かなければならないと
誰かに話した覚えがある
そうだとしても教会には入っていない
外で遊んで時間をつぶした記憶が何度もある

そのころから親に内緒でサボることをしていた
父に知れたところで知ったこっちゃない

☆の決意は固い

父だろうが母だろうが 先生だろうが 

☆を教会につれて行くことはできなかったであろう

幼稚園 4 シール

いつの時代もシールというものは魅力的だ
年をとっても 封筒の裏に貼るシールを探すのが楽しい
ついつい、箱いっぱいのシールを抱え込んでしまう
・・・・・・・・・・・

みんなが幼稚園になれてくると持ち物検査が始まった

ハンカチ・ちり紙だけだったカナ?

大きな模造紙が2枚張り出された
縦に園児の名前 横にひと月分の日付が書いてある

朝登園したら先生に持ち物を見せて合格したら自分でシールを貼る
ハンカチが青 すんだら隣りのちり紙、ピンクだ
名前は五十音順で 私はほぼ真中あたり

「どこで止まってるの」
「☆ちゃん」
「またぁ、早くしないとみんなが待ってるんだから
あなた後。みんな先に貼りましょう」

結局早く登園しても シールは貼れない

一番上にしてくれればできるのに
「上にして」
「あいうえおの順番はとても大事だからダメです」
いざ、見つけた、瞬間に 横から先生が貼ってしまう

自分でシールを貼りたい

 

60年以上たった今でも根に持っている

邪魔されない今は、シール集めと貼るのが楽しい

幼稚園 3 禁所区、ピアノのうしろ 

当時の視力は0.02くらい。
人から見ればめくらかも知れない、
でも、自分はほかの人を知らない、見える世界を知らない、
自分の視力内の世界が「見える世界」
ほかの人と違うなんて思ってみたこともない

幼稚園とは 普通でない ことを身体で教え込ませるところだ
・・・・・・・・・

トイレの場所がわかったら幼稚園の生活も変わった

トイレの場所がわからなかっただけだから
何ら問題があると思っていないし
先生にいじめられているという意識もまだない
いじめ そのものの存在を知らないのだから
そのころはいじけることも悪びれることもなかった。
ただ 忘れられず 記憶に深く残っていく

「めくらがきた」と迎えられた幼稚園
担当の先生も一緒にはやし立てた仲間だろう (無言で)

制服というものは 特徴を消してしまう
何日たっても 先生と生徒の区別しかつかない

鬼ごっこやかくれんぼもするようになった。
たくさんの同世代と駆け回るのは楽しい
誰が誰だか全くわからないけれどかまわない
運動は得意で走ることは特にだーい好きだ

ただただ一人、走り回っていた
要するに相手にされていないのだが
☆本人はそれにさえ気がついていない
鬼ごっこは走り回るだけで大満足で
除外されているとも知らず
つかまらないと思い込んでいるのだから問題は全くない
かくれんぼもいつも見つからないでおわる
いつも満足だ

ところが 先生はかくれんぼで私も入れるように指示した。
☆本人はもともと仲間に入っているつもりで
見つからないうちに時間が来ると思っていたから
取り立てて仲間にすることもないと思うのだが
みんなの仲間にするために、わざわざ☆を鬼にした。

10数えたら探しましょう

大きな声で10数えた
☆の声は良く響く

大勢だから いくら見えなくても見つけられるものだ
・・かくれんぼは好きな遊びだし
鬼は誰もいない障害物のない大部屋を思いっきり走る
問題がなければ実に愉快だ。

子供等はピアノの後ろだって行ってかまわない
普通に考えればあたりまえの空間だ
ところが☆は 「見えなくなるところ」
には行かないように釘を刺されている。

ピアノのうしろは禁所Sランクだ
「良い子」の☆は いいつけをまもって
姿が隠れるピアノの後ろには 行ったことがない

大勢の子供がピアノの後ろでひしめいている
☆が行ってはいけない場所に隠れるのだ
こまってしまった
いることはわかっているのに踏み込めない

「まだみつからないの?」
「だってピアノの後ろだもん」
「えっ?」
「先生が行っちゃダメだって行ったから」
「あらあら たくさん見つけられなかったね
時間だから終わりにしましょう」
禁止は解かない

☆の大負けで かくれんぼはおしまい
そのまま歌の時間になった
歌は大好きだが ピアノのうしろが気になって仕方がない
自分だけが行ってはならない場所 なぜ、

うしろに行こう
約束を破る一大決心だ
同日 放課後?みんなが帰ったあと戻って忍び込んだ
と言っても 今と違ってどこもかしこも
開けっ放しだから 普通に入ったのです !

ちょっと暗めの部屋、人がいないととてつもなく広く感ずる
すみのほうに 真っ黒いピアノがある
鍵盤の線より踏み込んだことはない
恐る恐るピアノの後ろに行ってみた。
ドキドキ 不安でならない
何しろ 約束を破るのだ

取り立てるほどのこともない 床があるだけだった

黒い影の真中に 黙って立ってみる
ひんやりした空間

寒い
さびしい
ここはいやだ

何かに追われる気がして走って帰った

幼稚園に通った残りの日々
かくれんぼや鬼ごっこはどうなったのだろう
見つけるためには 線を越えたのだろうか
やはり禁止区域だったのだろうか 記憶にない

たぶん、☆は鬼を卒業したのだろう

 

 

幼稚園 2 お便所はどこ?

父は私を一人にするときは 実際に歩いて行動範囲を規制した。
幼いころは一人で門を出ようとすら思わなかったし、
すべての用が父から定められらた範囲内でたりた。

父が教えてくれない所は知らないのだ

父は、まさか教師が何も教えずターゲットにしたことなど知らない?

ちがう、父は予想していたはずだ

エクラってなあに、の質問を無視したのと同じで

めくらの存在がが屈辱名だけだ

知っても 起こるることは自分には関係無い

知ったとしても 幼稚園がどうにかするべきで我関せず

幼稚園に文句を言うなどかっこ悪い

のである


完璧ないじめには ターゲット が必要だ
憎むに値する弱いもの
自分の立場が優位に利用できて
正当性を主張できる

めくらを嫌う教師は格好の「ターゲット」を手に入れたのである
・・・・・・・・・・・・

   

幼稚園に通い始めた初日から大変な事態になった
初日(入園式の翌日)だから園内をグルッと案内される
一般人と行動をともにするのは大変だ
ただただ人の後を追うだけで精一杯だった
足元以外何も見ていない、聞く余裕もない

玄関とすぐとなりの自分の組の部屋しかわからない

トイレに行きたくなった
どこかわからない
人に聞くことには抵抗がないから先生に聞く

人に物を尋ねるときははきはきと
両親から教わったとおりに
明るく 元気よく

「お便所はどこですか」
「さっき行ったでしょう。あっち」
「・・・あっち?」

もう先生はいない
言われたほうに行ってみる
どこも 来るな 近寄るな といっているようだ
足が進まない

戻ってもう一度聞く

「お便所・・
「さっき教えたでしょう あっちにあります」

ない
ない
ない

もう一度聞く
「あっちです 行ってみたの」

もう限界だった

おもらしをしたと 早帰りさせられた
それが3日続いた。

かんかんに怒った先生は5日目の朝
登園と同時に私をつかんでトイレへ連れて行く
「ここがお便所です。一番最初に教えたでしょう」
みんなちゃんと覚えたのにどうして覚えないの
3歳の子だっておもらしなんかしないです」

「だって お便所がどこにあるかわからないから」
「めくらはバカなんだから」

入園5日目にしてやっとトイレの場所がわかった
ついでに めくらに加えバカ という称号もついた

幼稚園 1 めくらってなあに

いじめというものは人間(だけでないかもしれない)
誰しもそれなりにする行いであって
節度を心得れば、仕方のないことであると思う。
問題はその節度であって、
教師・医師など、先生といわれる人たちは特に、
優位な立場を利用して「いじめ行為」を楽しむべきではない

・・・・・・・・

姉が先に小学校に行ってしまったので
父がわたしの監視役になった
病気療養中の父だから 負担だったのだろう
幼稚園に入ることになった

教会付属の幼稚園で、学区の小学校の向かい側にある
始まりが遅いので姉とは一緒に通えない

入園式は父に手をひかれて門を入った
きょろきょろと周りを見ると
左手に白い背の高い建物がある
てっぺんに十字架があるなんて知ったのは
大人になってからだろうか
教会の建物のてっぺんには必ず十字架があると知るまでは
「見る」という行いすらしないものだ

その入り口のほうには行かず 薄暗いところに向かった

「めくらが来た・・・」
いっせいに道が開く
遠巻きに子供等がはやしながら見ている中、玄関に向かった

「めくらってなに?」
父は答えない
「みんなめくらって言ってるよ」
父は何も言わない
その後もこの質問には口がなくなる

入園式が無事済んで翌日から通うことになった
延々と続く先生による生徒いじめの幕開けだ

たくましくもなるさ
とはいえ 傷も深い
性格だって ・・・

なぜ 先生たるもの、可能性を見出そうとしないのか
共に喜びあえる道を なぜ避ける
自分の目の前から消えてほしいといじめぬくより
明るい明日を探したほうが よほど気持ちいいだろう
人はなぜ そのことに気がつかないの

・・・・・・・・・・・・・

メクラ で変換しても 盲 の字が出てこない
多少不便だ
私は 盲=めくら という単語に違和感がない
視覚障害者 など 字数も多い
点字にしたら11マス使うし
漢字では四字多い
画数にしたら? 数えるのが面倒だ

言葉を変えたくらいでいじめがなくなるわけがない
いじめは表を繕えば繕うほど手が込んでくる気がする
考えられないようないじめ方をされる
言葉などでごまかせるほど 単純な物事ではない