幼稚園 6 父の魔法1 紙の不思議

楽しくない思い出ばかりの幼稚園で
たった一度だけ 良かったことがある

正確には幼稚園が良かったのではない
・・・・・・・・・・

七夕飾りを作る日がきた
いろんな飾りをつくったらしい

そのころには心も抵抗しなくなっていた。
しなさいといわれたことをするだけ
みんなが笹を囲んで飾っていても
☆には関係ない 大きなささを見て
それだけですごいと思うようになっていた
さわってみたいと思うことも 近づくことも
自分のすることではない
ただ部屋の隅に立っていればいい
うらやましいという思いの記憶すらない

部屋には大きな笹がざわざわしていた
子供たちはその下で遊んでいる
遠めに眺めながら、家で飾ることを考えていた

幼稚園が☆に求め、教育したことは
目立たないこと 邪魔にならないこと
自分が邪魔な存在だと自覚すること

色とりどりの 山のような色紙
☆は黄色が好きだ けど 関係ない

教わったことは
与えられた青い色紙で輪をつなげなる方法と
与えられた青と桃色の三角を交互に糊付けする
それが☆のすること
☆の短冊は先生がつけたのだろう

そもそも☆の短冊は存在しないのかもしれない

だって自分で飾らないのだから

それでも飾り作りは楽しい
紙が立体になるのはたいへん面白かった

家に帰って父に紙をもらった
父は学習塾をしていたので西洋紙ならいくらでもある

そして父は

☆がおとなしく夢中になることはとても丁寧に教える

長方形の西洋紙の一端を三角に折り、
はみ出したところを切ると正方形になる
すばらしい! これならいくらでも折り紙がつくれる
父の仕事は丁寧で仕上がりがきれいだ
さっそく☆も挑戦する
上手くはいかないがうれしい

その紙をさらに小さくし 輪を作った
父はつなげないでどんどん輪を作る
輪はふわふわはねながら山になっていく
もう見るのに夢中だ

次に別な紙で山になった紙をつなげ始めた
なんと効率の良いこと
一緒になってつなげた

父は☆が軌道に乗ると 正方形を作った紙の
残りの部分を細く切り、ひねって輪を作った

魔法だ !
紙の輪は生きているようだ すばらしい !
それもつないでながーい飾りができた

父は新しい紙を取り出し
魔法を見せてくれるという

父;ここに紙が一枚
☆;かみがいちまい
父;これを真四角に切る
☆;うんうん
父;これを三角に折る
☆;さんかくにおる
父;もう一回三角に折る
☆;もういっかいさんかくにおる
父;またまた三角に折る
☆;ちっちゃくなりました
父;さて ハサミでチョン
☆;ちょん
父;こちらもチョン
☆;ちょん
父;この辺も
☆;ちょん
父;最後に 魔法の息をかけて ふーッ
☆;ふーっ

もったいぶって丁寧に開いた父の手からは
母が編むレースのような美しい模様が出てきた

すっかり魔法にかかった☆は とりこである
真四角を作るために三角にエネルギーを注ぎ
美しい模様にするために ハサミを使いこなすべく
一生懸命練習した

魔法の 「ふーっ」 もちろん忘れない

父が三角を選んで、なおかつ
面白おかしくしたのには理由があるわけで
後からおもえば見えてくる

西洋紙を使う以上 正方形はジマエになる
☆が紙遊びをしたいというたびにいちいち
やらされてはたまったものではない
それに飾りでは色紙がほしくなる、間違いない
おまけに立体のゴミが山とでる
この遊びなら家にある紙で足りるし、いちおう芸術作品だ

父の魔法にたやすくかかり
そっくり吸収した姉にも引っかかり

それで楽しかった

七夕飾りはどうなった??

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