キリスト教の幼稚園だったので日曜学校がある
入園してすぐに行くわけではなく
これもなれてから なのだろう
・・・・・・・・
初めて日曜学校に行く日
姉が休みだというのに私は出かけた
いつものように玄関を入り部屋に行く
全員並ばされて
まだ足を踏み入れたことのない、
暗い廊下に連れて行かれた。
瞳孔が動かないから(そんなことはもちろん知らない)
暗いところでは足元が見えない
おまけに床ではなく 渡り廊下ですのこがひいてある
平らとわかっていればいくらでも歩けるのだが
すのこは経験がない
乗って安全だという認識がない
その上 すのこの高さがわからない
どのくらい足を上げたら上手く乗れるかがわからない
こわい
行列はまた 私で ストップしてしまう
叱られて こわごわ なんとか前に進んだ
少し行くとすのこが切れて 次のすのこに移らなくてはならない
また止まる
また叱られる
数回繰り返してやっとすのこになれてきた
教会に入る入り口はとても高さがあるらしい
先生は先に立って教会に入っていった
園児はピョンピョン 先生の跡を追いかけ入っていく
うしろの園児たちが追い越して消えていく
とうとう おいていかれた
どうにも怖くて前に行けない
すのこからの距離も高さもわからない
暗い廊下に たった一人残って座り込む
敷居が高い? 意味が違う・ヨネ!
担任が来て引っ張られて教会に入った
どうやって上がったか覚えていない
次から次と新しいことで
いちいち通り過ぎたことにぐずぐずしていられない
教会は美しかった
暗い廊下から一歩入ると そこは明るく
白っぽい床に赤いじゅうたんが長くのびて
椅子がたくさん並んでいた
天井は高く 上まで窓がある
天井近くのガラスには色がついている
色ガラスって初めて見た
正面(祭壇)は見えないけれども なにやらまぶしく美しい
美しい
美しさに見とれていると現実につかまれた
強く引っ張られ 椅子に座らされる
何にでも興味があって
先ほどの敷居の高さは もうどうでも良かった
記憶から消えないからずっとあとで振り返るので
常に 今 だけで忙しい
延々とつまらない時間が過ぎて
園児の名前が次々と呼ばれ
呼ばれた園児は前に行き 何かをする
それを一人でしなければならない
とたんに不安になった
その不安は今でも震えるほど覚えている
その後の屈辱とともに忘れられない思い出だ
名前が呼ばれて 立った
どこに行ったらいいかわからない
ただただ 立つ
もう一度呼ばれる
動けない
前に来るようにいわれて 前のほうに行く
美しい赤いじゅうたんの上を歩いているのに
そのじゅうたんはどす黒く先がない
イスのないところまで出た
たった一人立って 何をしたらいいかわからない
ただただ時間が流れる
叱られる時間を待っている
祭壇は 相変わらず見える距離ではない
ただピカピカ光っている
どっちをみても誰も 声を くれない
手を合わせて膝を突きなさい
とうとうどこからか声がした
いわれるままやったのだろう
牧師が 正確には 衣が近づいてきた
他人の映像のような記憶だ
何が行われたのか知らない
何の言葉も記憶にない
ただ どす黒いじゅうたんと 縁取りの黄色い線
石のような世界
そのうちに席に戻るようにいわれた
自分の席がどこにあるかわからない
うしろを振り返り 一歩すすんでは 止まる
もしかしたら ここ?
誰も何も言わない
じゃ ここかもしれない
シーン
次かもしれない
・・・・・
一列ごとに止まっては誰かが止めてくれるのを期待した
期待は外れ 誰も声を掛けてくれない
教会はバカ広く 冷たい 地獄だ
二度と来ない!!
一列ごとに止まっては待つ
また止まっては待つ
いくら繰り返しても 誰も声をかけてくれない
うしろのドアが見えてきた
例のごとく担任が 待ってましたと、かどうかは定かでないが
悪態をつきながら引っ張りに来た
「自分の席くらいちゃんと覚えなさい
私が恥ずかしい思いをさせられます」
イスの列まで連れて行き さっさと戻ってしまった
この列の何処に座ったらいい?
再び現れた先生、今度は はっきりと
「どうしようもない生徒を持つと恥ずかしいわ」」
大勢の前で馬鹿にされ 引っ張られて席につく
自分の席も覚えられない バカな生徒を持たされ
恥じをかかされる生徒にうんざりなのだ
それっきり二度と教会には行かなかった
もしかしたら 何回かは家を出た
日曜日は幼稚園に行かなければならないと
誰かに話した覚えがある
そうだとしても教会には入っていない
外で遊んで時間をつぶした記憶が何度もある
そのころから親に内緒でサボることをしていた
父に知れたところで知ったこっちゃない
☆の決意は固い
父だろうが母だろうが 先生だろうが
☆を教会につれて行くことはできなかったであろう