出席番号と背比べ

席順 1

 

学校は最初出席順に席を決めている。

出席順とは生まれ順。男女それぞれ1番から25番くらいまで

4月二日生まれがいれば未来永劫一番で4月一日生まれは最後になる。

子供だから一年の成長は目に見えていて後ろに行くほど小柄になる傾向があるが椅子なので問題ない。

しかし、立って並んだばあい頭がでこぼこに並ぶのは美しくない

そこで 全校朝礼などでは小さい順にならぶ それはかなり厳格で毎週の全校朝礼の時に担任が確認し入れ替える。

いつもちっちゃいのは一番前で背高のっぽは一番後ろ 毎週入れ替えがあっておもしろかった。

柱のきずは5月5日だけじゃたりない

日々の変化を見たくなる

 

生まれ順が一番で背が高ければボス的存在になる。加えて成績が良ければオール一番、委員長も揺るぎない。

そういう時代・社会だった

 

☆の番号は17番

この先一時19番はあったけど中学卒業までほぼ17番 学年が変わりメンバーが替わってもなぜか☆は50人クラスの17番だった

男女別番号で男女はほぼ同数 うまくいってた時代

17番は真ん中より後ろより

 

いつしか17番は自分の番号

割り算ではあまり「1」の位置

固有の17番

一番よりすてきな17番

一時期もらった19番も孤独の番号、

我一人 染まらない番号だ

などと思い入れは大きく膨らむ

17も19も素数と知ってからは素数が大好きになり延々と素数を探し求める☆。

パソコンなんてない時代、ひたすらこだわりと努力で懲りまくる

父が間違いをただしてくれると満面の笑みで喜ぶ

平均律を追い求める人を「そんなの求めてなんになる」などとバカにできない話であるが自分のことは棚に上げるものである

・・・平均律なんて終わりがないじゃん・・・

・・・素数だって終わりがないだろうが・・・

一人でけなし合う

 

唐突に並び順のことを思い出して口ずさむ

 

柱のきずはおととしの

5月5日のせいくらべ

ちまき喰べ喰べ兄さんが

はかってくれたせいのたけ

昨日くらべりゃなんのこと

やっと羽織のひものたけ

 

紐の丈、の意味がわからなかったなぁ

魚の干物?竹? わからなくても歌えるもん

着物着なかったし・・・

 

「背比べ」 柱に傷つけると叱られる、と教科書から消えた曲だ

当時は思いっきり柱に傷つけていたよね

おおらかという点でいい地代だったな

 

父の罠は☆の伸び代

1 父の罠に笑顔でかかる☆

 

 

結核療養中のお父さんはいつも家にいた

 

出かけたくても4・5才の想像を絶するお転婆を家に置き去りにできない

 

そこで

 

父  ☆、お父さんと遊ぼう

エ  うん (満面の笑み)

父  そう、一緒に同じに歩こう

 

父と手をつないで ランランラ・・・

身長174センチの父の歩幅で飛ぶ

力一杯飛ぶ

右足も左足もお父さんと一緒

手をつないで飛ぶのはすごく楽しい

日に日に距離が伸びる

 

 

 

今日はお父さんとお出かけ

喜び勇んで手をつなぐ

 

どんどん歩くお父さんに手を引かれて飛ぶ

 

お父さんの足だけを視ながら飛ぶ

 

疲れてもスピードは落ちない。

無口で必死になる

 

ぶら下がるようになってもスピードは落ちない

 

目的地に着くころにはへとへとで元気に遊ぶ力などなくなっていた

 

 

お邪魔した家でお菓子を食べた記憶がないほど疲れ切っていた。

 

 

お邪魔虫をおとなしくさせる罠に度ハマリした結果である

 

 

 

 

父の罠に懲りずにかかる☆

 

父とお出かけの帰りは別の道

 

しっかり手をつないでゆっくり歩く

 

右手に木がたくさん植えてある魅力的な場所があった

父は手前で止まる

とっても真剣な声で

 

父  ここはキツネがいて見張っているから視てはいけない。前だけ見て走って通り過ぎるように

 

父は走って通り過ぎる

 

しっかり脅された私は そこがおいなりさんだって知ったのは大人になってからで 子供時代はちらとも視ず脇を走り抜けていた

 

木があって石の狐さんがいたら ☆は入り浸るにきまっているのだ

 

当然のようにつながったよそサマのお庭たちもテリトリーになる

 

探しに来るのが面倒

 

父は自身の自由のために時間をかけて☆を罠にかけて捕縛する

 

父とのお出かけも回をかさねると☆には体力がつく

少々の遠回りくらいではへたばらない

道もすっかり覚えられてほっておいても家に帰れるくらいになってしまった

父は早めに歩いて目的地に着くと

ほら 見てごらん と ポケットからチョークを出した

訪問先の玄関先に大きな枠を描く

☆は輝く

父は チョークを 宝物のように☆に持たせた

この枠の中になら絵を描いていいよ

こすれば消えるから何度でも画ける

枠から絶対出ないように言いつける

父が碁を打って出てくるまで☆はチョークの虜だ

翌日から我が家の玄関内も外も☆のお絵かき場になった

チョークなら教室(我が家は学習塾)にいくらでもある

近い未来にチョークの箱から 一本 また一本 と 消えることになる

☆は罠をかけた父より困らせる天才である

 

父は減りの遅い蝋石を買ってくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しもやけのあと

☆の手足にはしもやけのあとがある

ハイハイの頃というのだから1才のふゆだろう

 

母は語った

母は毎日薪ストーブに薪をいっぱい入れて仕事に出かけた

☆はストーブの前に寝かされた

薪がなくなり部屋が冷えると☆ははって部屋の隅で丸くなった

その繰り返しで手足のしもやけは崩れたという

父は結核療養中で家にいるのにメンドウだと薪を足さない

真っ暗な部屋に帰った母は「今日もか」と部屋の隅から☆を回収し暖める

一日一回くらい暖めてもどうにもならなかった

 

父も病気で辛かったのだろう、きっと、たぶん

そんな状態だからだろう、☆は母の勤める学校の用務員室にしょっちゅう預けられたらしい

 

しもやけのあとはテカテカツルツルでちっともいやじゃない

他人は気持ち悪いとか目立つとか言うけれど

☆は意味がわからない

肌よりきれいに光って見えるんだから問題ない

学校で指摘されると☆は「見つけててくれた」と得意げだった

「コレ しもやけのあとなんだよ」

「もっと見て」の勢いだった

72才の今でも輝くワンポイントだ

 

今更ながらおもう 「いい性格してたなぁ」と

 

フと気になる

あのころ姉は何処で何していたのだろうか 寒い思いはしていなかっただろうか

 

 

☆は父にとって「忌み子」だが=しかながなく我が子=

母にとって=やっかいで手がかかるけど捨てておけない我が子=

兄弟はどうだろうか

☆は兄弟から邪魔にされた記憶がない 迷惑かけた記憶はいくらでもあるけど

 

そうだ どうせなら 名前「いみ子」もいいんじゃネ

もちろん「み」の「美」は却下 

意無子、不味子 捨己子 いいじゃない♪

☆は忘れることが苦手なひねくれ者である

 

 

 

 

 

 

母が薪を割った姿は記憶にあるのでかなり長く薪ストーブを使っていたのだろう

むぎこがし

☆の家のおばあさんとは父の母の妹に当たるらしい

あるとき☆はおばあさんに呼ばれた

麦こがしをごちそうになった

さらさらとした粉をコップに入れてお湯をそそぐ

「むぎこがし」とおそわっていただく

甘い

☆はすっかり気に入った

☆はうれしくて母に報告

「おばあさんに麦こがしという甘い飲み物のをいただいた」

母 「練ってた?」

☆ 「さらさらの粉にお湯を入れた」

母のつぶやきによると

麦こがしの入った香り付き砂糖湯らしい

姉にはむぎこがしを上げてるのにと小声

母はお見通しだった 少し悲しそうだった

姉が貰える「むぎこがし」はどんなものだろう

でも、むぎこがしは甘くておいしかった 問題ない

☆は見えないから意地悪されても相手が意地悪に努力するほどダメージはないのだ

猫よっといで

飼い猫が死んでから我が家は鼠に無防備な状態が続いている

農村地帯で鼠と言えば野ねずみ

ドブネズミもいるけれども家に来るのはちっこい鼠が多い

外に食べ物がある時期はあまり家に入る心配はない

が 一旦入られると 環境のすばらしさに出て行こうとしない

全く困ったものだ

 

==猫が外にいると鼠は中が安全である==

以前、仙人が我が愛猫を外におい出した事がある

暖かい気候で猫は困る様子もなく屋根裏や物置で過ごしていた。

家の中は猫に荒らされることがなくなりきれいになるはずだった

カサカサ ピタッ カサカサ・・・・

は 夜中にもかかわらず飛び起きた

大きな洋服ダンスや和タンスをどけてみた

畳にわらの家ができていた

その時点で猫は起こされて呼び入れられた

我が家は以前にも増して猫天国になった

星の下に生まれる、って

 

まちがった星の下に生まれたにちがいない

 

星の下に生まれるってなんなの?

人は皆輝いている、とか

恒星と惑星

一等星と六等星とそれ以下と

流れ星もある

 

☆は流れ星に生まれてあっという間に消えれば良かったんじゃない?

そうすればみんなうまくいったかも知れない

私のすぐ後に生まれるはずだった「人」も流されずに住んだろうに

 

私☆と弟の間に流された命があった

なんでそんなことになったかというと

「☆に手がかかったからムリだった」

そうだ

下ろせるぎりぎりまで考えて流したそうだ

 

知ったのは二十代だけどねぇ

母は話題にのって話していた

☆も普通に聞いていた

 

でもねぇ

いいのか?

☆がいるのに

成人とはいえ少々は気になる

大いに気になる

生まれを恨む

流れた命に謝罪する

よね

 

両親の思いはもしかして

あっちだったら良かった

だったら

☆は何を思えばいいのだろうか

何を背負って生きればいいのか

 

後悔って

☆がするものじゃないだろう

両親だってしても始まらないし

 

☆はくず星だよなぁ

流れ星になれば良かった

一瞬光って人の願いをいっぱい聞いて

 

特別は認識しない

小学校の入学式からあった祭壇は美しかった

見たい 触りたい 後ろに行きたい

 

祭壇のある部屋は入るとかくれんぼをはじめるから
立ち入り禁止だ ひっくり返されたら
そりゃ 大事だもんな

お葬式の数日間、親の顔を見ていない
親の方はちゃんと☆を見ていたようで
「いなかった」と言ったら
「そんなことない、毎日会ってた」と言われた

☆は会うだけではたとえ親でもわからない
声を聞かないと、話をしないと、わからない
姉がずっと一緒だったので心細くもないし
忙しいのだろうと思って探しもしなかった
後からおもうのだが、
母が黒い服を着ていると確認していなかったと思う
普段と違う姿には☆の目も頭もついていかない
そばにいても母だと思わない可能性が高い
何しろ ☆の認識方法最重要は色と声だ
普段ありえない色だと 誰であれわからない
声が聞こえなければ 知らない人だと思い続ける

そのうちに祭壇も消え 親ともめでたく合えて

葬式饅頭もなくなって

めでたしめでたし

葬式まんじゅう化けて出る

数日間葬式饅頭食べ放題

もういらない
よく似たデザインのチーズ風味のふわふわ蒸しパン
美味しいけど、思い出す
はんぺんを焼いても 思い出す

小学校の入学式から帰ると 入学したてのほやほやだと言うのに
待っているのは葬式饅頭のおやつ

姉;いくら食べてもいいからね
単品と言うのはつらいものだ
カチカチになってもまだある

姉;ほしかったらまだあるよ
ほかには何もない
歯が立たなくなると中身のアンだけ食べる
☆;いらない
姉;そういわずにどうぞどうぞ
☆;美味しくない
姉;最初あんなに喜んでたじゃない
遠慮することないから ささ どうぞどうぞ
自分の分も押し付けていたのではないかと思われる

 

そのうちに祭壇も消え 親ともめでたく合えて

葬式饅頭もなくなって

めでたしめでたし