☆の手足にはしもやけのあとがある
ハイハイの頃というのだから1才のふゆだろう
母は語った
母は毎日薪ストーブに薪をいっぱい入れて仕事に出かけた
☆はストーブの前に寝かされた
薪がなくなり部屋が冷えると☆ははって部屋の隅で丸くなった
その繰り返しで手足のしもやけは崩れたという
父は結核療養中で家にいるのにメンドウだと薪を足さない
真っ暗な部屋に帰った母は「今日もか」と部屋の隅から☆を回収し暖める
一日一回くらい暖めてもどうにもならなかった
父も病気で辛かったのだろう、きっと、たぶん
そんな状態だからだろう、☆は母の勤める学校の用務員室にしょっちゅう預けられたらしい
しもやけのあとはテカテカツルツルでちっともいやじゃない
他人は気持ち悪いとか目立つとか言うけれど
☆は意味がわからない
肌よりきれいに光って見えるんだから問題ない
学校で指摘されると☆は「見つけててくれた」と得意げだった
「コレ しもやけのあとなんだよ」
「もっと見て」の勢いだった
72才の今でも輝くワンポイントだ
今更ながらおもう 「いい性格してたなぁ」と
フと気になる
あのころ姉は何処で何していたのだろうか 寒い思いはしていなかっただろうか
☆は父にとって「忌み子」だが=しかながなく我が子=
母にとって=やっかいで手がかかるけど捨てておけない我が子=
兄弟はどうだろうか
☆は兄弟から邪魔にされた記憶がない 迷惑かけた記憶はいくらでもあるけど
そうだ どうせなら 名前「いみ子」もいいんじゃネ
もちろん「み」の「美」は却下
意無子、不味子 捨己子 いいじゃない♪
☆は忘れることが苦手なひねくれ者である
母が薪を割った姿は記憶にあるのでかなり長く薪ストーブを使っていたのだろう