医大 理不尽と生きる知恵 7 病院は☆の町

蠅につかまって朝の診察が終わると

午後はフリーで思いっきり自由時間

スリッパを履いていけるところは全部自分の町

手術室という牢屋もある

病院探検にサイコウ日よりとなった

 

五階の外科病棟は一日で居場所&隠れ家になった

ほかにもいいところがあるだろう

 

二階の記憶が無いのは入院病室ではなかった、とか

ウロウロ人がたくさん居る、とかで

エレベーターホールから先が:お呼びでなかった:に違いない

 

三階が小児病等 子どもがいるなら友達になろう

聞く話では小児麻痺の子が入院しているらしい

小児麻痺とはどんな病気、怖いとだけ聞いている

ドアが2重になっていて厳重だった

そっと開けて入ってみる

 

シーン

誰もいない

冷たい空気が流れていて物音一つしない

病棟が死んでるようだ

子どもの病室とは思えない音のない世界

 

よく磨かれた薄緑色の床が西日を反射して

まるで氷でできているように光っている

寒気がした

怖くなってそっとドアを閉める

小児麻痺って こわい

 

逃げるように四階に上がる

ここも静かだった

小児病棟のような異様な空気ではないが

ーーーつまらない

ここは内科だった気がするが覚えていない

 

やはり五階がいい。

おじさんたちとお菓子を食べて

夕飯前に階段を走っておなかを減らし

食器の音を聞きつけたら表から部屋に戻る

 

翌日は診察有りか無しか 先生が来たか来なかったのか

☆の知ったことではない

朝からベッドは不在で、平和な一日だった

 

医大 理不尽と生きる知恵 6 知力と体力の向上

手術失敗? 誰にとって?

翌日は 診察室でたっぷり絞られた

もう先生は嫌いになっているから聞く耳も持たない

次の約束など絶対しない

無言が一番
 
わたしの興味は病院という大きな建物に移っていた

退屈なお行儀の時間の後、さっそく行動開始

病室は6階 探検し甲斐がある

まずは裏階段からはじめた

なぜ裏かというと エレベーター前の階段に行く前に

通るたんびに呼び止められる看護婦室の前を通らなくてはならない

見つからないに越したことはないからだ

 

階段は地下から屋上まで同じ物で2色使いだった

クリーム色が奇数階から偶数階へ上がる色

偶数階から奇数階は薄い緑色で

どちらも明るい色でとても優しくいい感じ

等間隔で階段の数も廊下から踊り場 踊り場から廊下まで

全部同じで とても安全だ。

 

当然 運動会

いやーな地下へは いかない

 

六階から一階まで数えながら下りて階段の数を確認し

一階から屋上まで一気に駆け上がる

なれてきたら下りも走る

屋上のドアは鍵がかかっているから出られない
 
すっかり気に入って日課に決めた。

何よりも人がいない

廊下の色も奇数階と偶数階で違うので居場所が自動的にわかる

入院中ここで人と出会ったことは一度もなかった

 

さて、手術の翌々日

定例 午後の診察時間がやってきた

そろそろというときになって抜け出し階段に隠れた

「☆ちゃん 先生が来ましたよ」

返事はおろか どこにもいない

数人の看護婦さんが探しに歩いている

私は踊り場で声の様子に聞き耳を立てていた

そろそろ良かろうと下の階の廊下を通って

表に出て階段を上がった

裏階段はヒミツの場所だから見つかるときは表がいい

計算通り六階についたところで見つかる

 

看護婦;どこに行ってたの 先生帰っちゃたよ

☆;下に行ってた

看護婦;明日はちゃんといなさいよ

約束はイヤだから 無言

 

翌日は昨日通り抜けた

五階の雰囲気が気に入ってウロウロしていると

おじさんが病室に呼び入れてくれて

部屋の人とすっかり仲良くなった

 

外科&整形外科病棟で雰囲気も明るく 賑やかだ

目をひいたのが・・・・→ワクワク目が離れないのは

足を白い包帯でぐるぐる巻きにして伸ばしている姿

ギブスなど見たこともないからすごい足だと思った。

お菓子をいただいておしゃべりして

先生が帰ったころにおいとまをする

 

看護婦;今日もいなくなって。先生今まで待ってたんだから

    また帰っちゃったよ

 

翌日 敵もさる物(者でなくていい)

蠅先生 午前中にやってきた

当然叱られる

蠅;逃げてばかりだからこんな時間に来なきゃならない

☆;(明日は朝も抜け出そう)

 

医大 理不尽と生きる知恵 5 約束の行方

やっと来た手術の日

朝ご飯はビスケットが数枚

そんなことはどうでもいい

かえって準備運動みたいでわくわくした
 
今か今かと先生を待つ
 
やっと先生が現れた

虻;こんにちは 元気そうだね

にこにこして ベッドにすわる

並んで腰掛けて 足をぶらぶらさせてお話を聞いた

 

蠅;これから手術しに行くことは知っているよね

☆;うん 私 目の手術するんだよね

蠅;そうだよ。手術室に行って 手術するんだよ

☆;うん

蠅;何にも怖くないから いい子にしててね

☆;ハイ

蠅;泣かないって約束してくれる?

☆;うん。泣かないよ

蠅;痛くも何ともないからね

☆;うん

蠅;☆ちゃんはいい子だね

☆;うん。・・にこにこ・・

蠅;じゃ、先生と一緒に手術室に行こうか

 

ベッドから飛び降りて先生の後についていった

リュックサックがないのが残念

 

手術室は地下にあるが土地が斜めになっていて

エレベーターを降りたところはまだ半分地上で明るい

先生と仲良くエレベーターを降りて手術室へ向かう

手術室には 大きな鉄のような扉があった

異様な雰囲気に思わず立ち止まった

入ったら出られない気がする

 

蠅;入って

☆;・・・・仕方がない、ついていく

蠅;ここで待っててね

・返事をしなかった・

手術台は高くてよじ登るのにかなり苦労した

登って見ると部屋は暗く ひんやりしている

かなり広いが誰もいない

見たことのない部屋に興味を持って眺めた

広い部屋の中でひときわ目をひくのは真上にある電気

大きなかさの中にたくさんの電球があり、暗く、淡く光っている

電球の数は何度数えても途中でわからなくなる

ベッドに立ち上がって数えていると

?声;危ないからベッドにたたないで

どこからか声が聞えた 誰もいないわけでもなさそうだ
 
見えるものすべて見てしまっても誰も来ない、

広くて薄暗い部屋の高いベッドの上にいると不安になった

帰ろう

ベッドから下りてドアに向かう

さっきの声は止めようとしない

部屋を出ようしたところで見つかった

蠅;待ってろといったろう

優しいはずの先生の声

・こわい・

・これは逃げなければ

とっさの判断で逃げ出そうとするがつかまってしまった

 

蠅;つれってって

二人の看護婦に引っ張られ、ベッドに載せられた

物言わぬ二人の看護婦にもうひとり加わり、

押さえつけられて無理やりねまきを脱がされた

当然、☆はパニックを起こして抵抗する

さらに人が増えた

大勢に押さえつけられ服を剥ぎ取られ

寝かされて手足を縛られた
 
冷たい 背中が凍りそうに冷たい

出たい

寒い

帰りたい

 

手術が始まる前に 場所を拒否していた

抵抗も空しく手足どころか胴体まで縛られ

身動きできない

それでもメいっぱい抵抗した

そのうちに人が大勢集まってきて

魅力的な電気がパッと明るさを増す

 

☆;あっ!

一瞬電気に気を取られ抵抗を止めた

淡い光を放っていた魅力的な電気が まぶしいほどに輝いた

 

蠅;いい子だね

わかっていない

 

電球を数えているといきなり目に枠をはめられた

黒くて大きくて硬い

目が閉じられない

とたんに押さえつけられていることを思い出す

イヤだ 怖い 怖いよ

誰も聞いてくれない。 泣く わめく

 

何かが目に近づいた

先が細くなった銀色の長いものだ

 水晶体がないと 目に近ければ近いほど良く見える。

 自分のまつげなら数えられるくらいに見える。

メスは 遠くにあれば存在すらわからないのに

目に近づけば近づくほど とんがっているのがわかる

視力がなくても 目の前にくれば見えてしまう

 

目に枠をはめるなど想像できるわけない

手術とは切ることだとも全く教えてくれなかった

近づいてくるものが何であるか見当もつかないが

縛り付けて 殺しに来る

さわるな! よるな! イヤだ!

メいっぱいどころか 命がけで抵抗

蠅;もっときつく縛れ

先生の声が聞こえる

もっと強く抵抗する

 

強く縛られれば縛られるほど 泣き喚いた
 
蠅;泣かないって約束しただろ

  約束を破るのは悪い子だぞ

  おまえが泣いたら手術ができないだろうが

  おとなしくしろ

  どうしようもないヤツだ

 

怒鳴られ 怒鳴られ 怒鳴られて

叱られて 叱られて 叱られて

どんどんきつく縛られて

 

だからどんどん逃げたくなる

なんとしても逃げないといけない

これはもう命の戦いだ

 

ふっと やさしい顔がのぞいた

しずかに そーっと覗き込んだ

パタッと泣き止んでその顔を見返す

白髪混じりのやさしい顔

地獄に仏の気分とはこういうのを言うのだろう

助けてくれると思った

 

「私がやろう」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大人になってわかったことだけれども

そのやさしい顔は眼科医長の今泉先生だった

角膜移植の権威で有名な眼科医だ

この医大の看板医だ

そのままやってもらえばよかったのに

斜視の手術を医長がするなどめったにないことで

泣きもうけだったはずなのに

そんなこと知るわけもない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今泉;こんにちは

☆;・・・・・・・・・・

  先生の顔をじっと見る

今泉;やれるかな、泣きすぎてるからな

☆;。。。。。。。。。。

 

メスが近づくと 恐怖がよみがえる

泣き始めるともう止まらない

虻の声が、約束したのにまた泣く と叱る

叱られれば叱られるほど、ますます泣きたくなる

担当、虻の声が聞こえると ムチャックチャ暴れたい

☆;・・うそつきはそっちだ・・

全身全霊の力の限り抵抗して 手術はさせなかった

 

今泉;こんなに泣かれたらもうできない、今日はやめだ

ベッドを取り囲んでいた人たちがいなくなる

蠅;手術ができなかったんだから泣きやめ

☆はホッとしてパタっと泣き止んだ

  勝った 

  終わった

蠅;おまえが約束を破って泣くから

  手術できなかったじゃないか」

  おまえのせいだ

悪態をついて先生は出て行った

 

私は悪くない

小さな声にだして 言いかえした

自分で部屋に帰ると言うのに 

注射を打たれ 眠らされてしまった

 

絶対に忘れない。

 

手術室までつれてくればこっちのものだ

くらいにしか思っていない

無条件に全面信頼しているから

言われたまま約束するのに

約束を破ったから おまえは悪い子だ

うそつきだ

ダメなヤツだ

最低のヤツだ 

信用できない人間だ

 

それが大人のやり方 ですか

それがお医者様 ですか

自分が信頼を裏切ったことに気づきもしない

子どもの心が壊れたことなんか知ったこっちゃない

 

人形の手術でもしていればいい

 

もう大人は信用しない

先生大嫌いだ

 

医大 理不尽と生きる知恵 4 あめだま

先生はごくごく普通にやさしい先生だった

お兄さんのようではない

:あめだま:を持ったおじさん というところだろうか

=実はインターン上がりの新人さんか二年目とかだったらしい

 

診察が終わると話しはじめた

「☆ちゃんは手術をするんだよ」

「ハイ」

「先生の言うこと聞けるね」

「ハイ」

「☆ちゃんはすなおでいい子だね」

「にこー」

 

「素直でいい子だ」と誉められて大満足だ。

☆は誉められるとお菓子をいただいたと同じにうれしい

すっかりご機嫌になって

「私手術するの」と得意になって触れ回った

遠足に行く気分だった。

 

斜視は簡単な手術と言っても比べる対象の問題で

遠足と同レベルに待つものではない

しかも簡単かどうかは医者の問題であって

患者にとっては失敗すればどっちも同じだ

手術という新単語が娯楽ではないことを

医者はきちっと説明をするべきだ

7歳にもなれば理解できるし

必要であるとわかれば、我慢の限界があるにしろ

一所懸命こらえようと努力できる

 

飴玉のおじさんは 釣った相手が壊れてもかまわない

甘い言葉でだましても目的は達成できる

餌に釣られた魚は 水を離れると大暴れする

命をかけた抵抗だ

飴玉で釣られた子どもだって さかなと大差ない

 

ハエ先生は 子どもを侮(あなど)っていた

子どもを信頼していない

子どもを バカだと思っていた

おそらく 子どもが嫌いなのだろう

それに、壊れたって かまわないのだろう

 

素直でいい子だと 誉められて

朝から晩まで手術に行くのが待ちどおしい。

1日2日先の「未知の遠足」へ夢をはせるのだった

 

 

 

医大 理不尽と生きる知恵 3 入院

☆は新しい言葉が大好き らしい。

入院ってどんなだろう 

入院も検査も手術も、どれもこれも新しい言葉に浮かれてしまう

はじめての遠足

はじめての海

初めての学校が、とてもよかったから

初めての幼稚園の記憶が薄れていた

 

思い返せば、父と行った「はじめて」はろくなことがない

いいことの記憶が消えるほど ひどい目にあった

たくましくはなった

社会勉強 と 言えなくもない

 

家から歩いて 

今の足なら15分ほどの距離に医大がある。

朝、父に連れられ出かけた。

検査のために何度か通っていたから慣れたものだ。

その日はいつもの入り口と違うところから入った。

天井が高い、こんな天井の高い建物に入ったことがない

それに広くて暗い、

めいっぱいきょろきょろして珍しい建物を観察した。

私がよそ見することはいつものことで

手をしっかり握ってぐいぐい引っ張られて歩く

周りに夢中になっているうちに

父は受付を済ませ、

エレベーターに乗って病室についてしまった

 

眼科は6階。一番上だ。

エレベーターを降りると広い空間と真正面に階段がある

広い空間から左に伸びる廊下は細く長く暗い

何号室かは覚えていないが 東側の真中へんだった。

大人ばかりの8人部屋。

この部屋の中で少なくとも3回は引っ越している

誰かが退院すると ベッドの移動がある

動けない患者とか長期入院とか 大人の考えることだ
 
「子供か」

最初に聞こえた声だ。決して喜んではいない。

父が周りにあいさつする。

当然一緒にあいさつしたのだろう、記憶はない。

あたりまえのことはあたりまえにやっているはずだ。

なぜ記憶がないかというと

はじめてみる病室というものに夢中だったからだ。

大きな部屋に白いベッドが並び

どのベッドにも寝巻きを着た人が乗っている。

窓は大きく部屋はそれほど暗くない。

6階だから空しか見えない

 

父はまもなく帰っていった。

その日はおとなしくしていたことだろう

いくらなんでも・・・。

周りの人とおしゃべりをしたり、

メいっぱい愛想を振り撒いて 

お菓子をちょうだいしたに違いない

病院で飢えた記憶は手術後くらいなものだから。

 

午後になって担当医が来た。

二人できたと思う。

「こんにちは。ハエ先生です。」とか何とか

「こっちにおいで」と手招きしたらしい

このときにほんのわずか違和感を感じた

私には見えなくて、挨拶して帰っていくのかと思った。

先生が後ろを向いて出て行くのを見ていたら

部屋の人が「診察だから行っておいで」

と声をかけてくれた。

そういえば、先生の手が動いたような気がする

 

先生の跡を追い看護婦さんの部屋の前を通って

西日が入ってとても明るい診察室に入った。

例のごとくきょろきょろして部屋を観察するのに夢中で

診察はいつもと同じでどうでもよいし、

特に変わったことはなかった。 

ハエ先生もごくごく普通に優しい先生だった。

 

 

 

 

 

医大 理不尽と生きる知恵 2 どうして医大

我が家の裏に:血のつながりはない:「家」の親戚が住んでいた。

そこの息子が医大で内科のインターンかもうちょっと上のお医者さん。

その内科の「お医者」さんが父に

「斜視は手術で治る、早いほうがいい」

と一般的な知識で手術をすすめた。

私の斜視は治るものではない。

たとえ一時期みてくれがよくなっても

白内障による左右の視力差が解消しない限り戻ってしまう。

そのことはすでにわかっているはずなのに

父は見てくれの悪い斜視にどうにもがまんできない。

 

そりゃそうかもしれない

 

目が曲がっているだけで 自分の娘が将来娼婦になる

なんていう目で見られたら耐えがたい。

生まれなきゃよかった と思ってももう遅い。

江戸時代じゃないのだから捨てるわけにも行かない。

そんな風に思っても何ら不思議ではない。

生きてしまって ここに居るのだから、

そのキモチを抑えるのが人間というものだ 

と 心得よ

 

父が(素直に)少しでも見えるようになってほしい

と願っていたろうから責めるわけにも行かない。・・

 まあ、見てくれ100%だったんだけど 言わない、知らない

しかし、医大の方はおかしい。

それまでの医療機関でことごとく、「この斜視は治らない」

といわれているのに なぜこの医大だけが

「手術で治る」と言ったのか。

内科の先生はともかく眼科が治ると思うはずがない。

スタートから間違っていた。

 

というわけで

小学校2年の4月 ひと月医大に入院した。

専門の方は まず、斜視にひと月の入院? と

疑問をもつのではないだろうか。

目の外側の手術だから 昔だって一週間だ。

 

私が 「今」とか 「このこと」

という「点」に生きるタイプだから

入院生活を悪かったとは言わないけれども

配慮というもののかけらもない

踏みにじることしか知らない医者を

今でも医者の資格のない人間と思っている。

 

生後手術をして下さった先生との出会いがなかったら 

眼科医 あるいは医者すべてを信用しなくなったかもしれない。

 

大人になって

医者の良し悪しを私個人の尺度で白黒はっきりさせて

信頼できないとおもう医者には

途中で帰ってでも、たとえ治らなくても

世話になりたくないと思うようになった基礎作りの入院だった。

 

私は自分の担当医の名前を思い出せない。

一月も付き合ったのにその一字さえも思い出せない。

10年後に偶然会った時はちゃんと覚えようとした。

そのとき、今後出会わないために名前は覚えておこうと思ったのに 

白衣に黒ズボンも怪しいくらいに 覚えていない

もし開業していて (間違ってでも) 出会うことのないためには 

名前は覚えるべきだと思うのだが・・・。 

 

この先生の呼び名を考えた

虻・蚊・蝿・蛇・うーん 蠅 にしよう

うるさいけど☆にはたたけない

偉そうに頭の上を飛ぶギンバエ 

大きいのにはえたたきでは間に合わない

フフフ

昨今は殺虫剤で家内全滅を目指して頑張るのだ

 

2年間学校が好きだった

☆の席は黒板が一番よく見える席 17番の席じゃない

森田先生はいう

☆さんは目が悪いので席は黒板が見えるように一番前にします

☆さんは目が悪いけれどもほかはどこも悪くありません

走ることも同じにできます

鬼ごっこもかくれんぼもみんなとできます

 

席替えがあっても☆は定位置でクラス内に疑問がない

 

☆は森田先生がいた2年間特別を感じたことがない

特別なのはあつ子さんの最初のころとじゅん子さんだけだ

2年間だけめいっぱい学校生活を楽しんだ

幼稚園の頃の疎外感を思い出すことは皆無だった

 

 

心臓弁膜症のじゅん子さん

じゅんこさんは順番通りの席にいた

目が悪いわけじゃないし 足指が足りないわけでもないから当然だ

ちっちゃな身体で全校朝礼は一番前確定

とっても優しくて☆はすぐ友達になった

 

じゅん子さんとはしょっちゅう二人で話をした

友達から特別の仲良しになった

じゅん子さんは心臓弁膜症といって身体が大きくなると死んでしまうと言う

いつも死と向かい合わせで生きていると言う

☆は「死」がわからない

じゅん子さんは「死」と向き合っている

本当は学校にも来れないらしい

けど

じゅん子さんは学校に通って友達を作っておしゃべりをしたかった

だから両親におねだりをしたのだそうだ

 

ある日 ☆は校庭を突っ走っていた

☆は元気だ 走ることが大素手だ

そして石が見えないのだ

膝は擦り傷と打撲でいつもかさぶたがあるくらい走るのが好きだ

学校の校庭は足が引っかかるほどの石がほとんどない

だから おもいっきり走っても転ばない

☆は校庭が大好きで 用もないのに走り回った

滅多にない石につまずいてすっ飛ぶほどひっくり返った

運悪くじゅん子さんが二階から見ていた

じゅん子さんは自ら走って一番に駆けつけてくれた

「☆さん大丈夫?」

ちっちゃな身体で手をさしのべてくれる

おもわず じゅん子ちゃん、走っちゃだめ」

じゅん子さんの手は うれしそうで悲しそうで とてもあたたかい

私はほっておかれ先生はじゅん子さんを保健室へ抱いていった。

その後いつまでたってもじゅん子さんは学校には来なかった

じゅん子さんに会えたのは季節が変わってから

「わたし 生きたい」

じゅん子さんは生きるために名古屋と言うとっても遠い病院に行くことを決めたと言う

そこは病院学校があって 入院しながら勉強ができるそうだ

「病気も治して 学校にも行って また☆さんと逢いたい」

それがじゅん子さんとのお別れの言葉だった

2年生の終わりに転校していった

森田先生は じゅん子さんが生きることを望んで手術を受けるために両親と別れて遠い病院へ行きます。また会える日を楽しみにしましょう

と送り出した

4年生で亡くなったと聞く

クラスの障害児は☆一人になった

 

森田先生はじゅん子さんの家にも頻繁に訪問し励ましたという

自宅療養が望ましいが、いずれ、たぶん10才を超えられない命

ならば 生きる喜びを知ってほしい

一日でも長く生きてほしいが檻の中で死ぬために生きるのではなく

希望を胸に「生」を望んでほしい

死を覚悟した7・8才なんて胸が痛む

少しでも同じ年代の輪のなかで輝いてほしい

森田先生はそう思ったそうだ

当時 先天性の心臓弁膜症は10才を超えられない

10才ころに人の身体は大きく成長するらしい

それに心臓が耐えられないと言う

諦めることをやめたじゅん子さんは☆の星だ

 

その年度で森田先生は教師を辞めた。緑内障が進んで限界だと・・

 

 

足指4本のあつ子さん

席順2

担任は森田先生=故人

男女並んで1つの机。

横4列8人縦6列+ だった たぶん。

☆は窓から2列目の一番前で17番目じゃない

前列廊下から2番目の一番前の女子も順番じゃない

 

森田先生 ☆さんは目が悪いから黒板が良く見える席です

☆は考える、目が悪い?私見えるよ

☆は「めくら」の意味をまだよくわかっていない。

「見えない」の意味も状態」もよくわかっていない

全然わかっていない

でも☆は特別が心地いい

森; あつ子さんは足の指が4本しかありません

でもほかはみんなと変わりないです

じゅん子さんは心臓が悪いので走ることができません

じゅん子さんはおやすみも多いけれど仲良くしましょう

的なことを言った

 

さあ 休み時間はあつ子さんの足が見たい

あつ子さんは靴下をはいていない

一番前だから見学スペースは十分ある

廊下側に近いのはよそのクラスからも見学客があふれるからだ

数日間 あつ子さんは見世物になった

☆はみたい みたい みたい

けど 見えない 足の指の本数なんてわからない

靴下をはいていない足は見えるのに指の本数なんてわからない

大きい学年の生徒も並んで見に来るのに☆には見えない

具体的に「周りとの違い」を教えられる

数日もすれば見学客も来なくなる

あつ子さんは平和を手に入れた

誰も足指の本数など気にしなくなり、そのうちに違いなど忘れられた

あつ子さんはとっても元気で友達もたくさんできてただの人になった

障害者位置抜け、一抜けたー クラスの障害児は二人となった

 

あつ子さんのお父さんは☆に語る

森田先生は入学前 かなり長い時間をかけてあつ子さんの両親と掛け合ったそうだ

毎日家を訪問し あつ子さんに靴下をはかずに学校に来るように諭したという

いやがって泣くあつ子さんに 一週間がまんすれば誰も気にしなくなるからがんばろうね、と、それはもう 毎日かかさず説得に来たそうだ

根負けしたあつ子さんは約束通り入学式の翌日から靴下をはかなかった

教室は休み時間のたびに学年関係無くあつ子さんの足を見に行列ができた

「足の指が4本だって、どの指がないのかな」と話声も聞こえる

あつ子さんは下を向きながら足を隠さず耐えた

☆は満足して通り過ぎる人たちを見ていた

森田先生は人だかりがなくなるまで あつ子さんの家庭訪問を続け励ました

あつ子さんんのお父さんは「いい先生と会えて良かった」と何度も言う

一生かたわで形見の狭い思いをするのかと心配したけれど、あんなに元気に裸足で走れるようになったんだからこれからも大丈夫だろう、

最初はね、さらし者にすると聞いてほんとうに怒った

なんて人が担任になるのか、と だけど熱心でね

『自分も緑内障があって視力がどんどん落ちてきて

ほかの先生たちにいやな目で見られてつらい思いをたくさんしているけれど助けてくれる人もたくさんいてね、理解しあえることが大切だとわかったんです』

と言われて ならば賭けてみるか ということになって、あつ子も折れてね

森田先生は学校でもすごく声をかけてくれて

毎日家にも来てくれて励ましてくれて もう足のことなんて気にしなくなって・・・・・

 

☆は心からうれしい

おじさんからお話を聞いたのは小学校3年生だったけど、おじさんのお話はとてもあったかくってうれしかった

あつ子さんとは4年生のクラス替えでさよならだった

☆は結局足指4本を見られなかった 残念なのは言うまでもない

☆は正直なのだ

 

おじさんはなぜ難しいお話を☆にしてくれたのだろう

きっと☆にも元気に生き抜いてほしいと願ってくれたんだろう

乗り越えたあつ子さんとはちがい、これから先に来るであろう世の中の重圧に耐えるように、乗り越えるきっかけになるように、きっと心を込めて話してくれたのだろう。

ありがとう あつ子さんのおとうさん

 

 

スズメの観察日記から数十年あと

ワタクシ☆は母親になっている

娘は4才くらい

白内障が遺伝しななかった奇蹟の娘〈こ〉だ

その頃は茨城県牛久市に住んでいた

スズメの観察日記からずいぶんと時が流れた

 

スズメとは 木の中で大群で大騒ぎする鳥
調理前も含めて、パンやご飯が大好きな鳥
姿格好は「スズメのおやど」の絵の人に任せる

この、3行目が 人と違う
私が見ているものは本物ではない
絵本の鳥だ あるいは写真

☆の世界はほとんどが知識出あって

思い込み、偏見 固定観念 先入観 が支配している

知識を更新することを躊躇したりしなかったり

要するに偏った人間なのだ

否定する木はないしただすつもりもない

これが盲学校高等部で教わった「人の中で生き抜く生き方」なのだ

 

 


娘が拾ってきたスズメを見て驚いた
まず とてつもなく小さい

☆;ええ!こんなに小さいの
娘;そりゃ、まだ小雀だから
この時点で 言ってることにズレがある

☆;スズメってさ すごい声じゃない
庭に来るような鳥かと思った
それに、どの絵本も もっと大きく描いている
娘;お母さん、それは絵本だもの
ツグミのこと? まさかカラスじゃないよね
☆;カラスはわかる
スズメって 茶色じゃないンダね
娘;?? グレーっぽいって言えば・・
目、おかしくない
☆;そりゃ わかりきったことだ

 

目、おかしくない、と平気で言ってくれる娘は最高だ

対等である証なのだから

対等であればサポートしてくれるときも人としてお互い対等でいられるのだ