2年間学校が好きだった

☆の席は黒板が一番よく見える席 17番の席じゃない

森田先生はいう

☆さんは目が悪いので席は黒板が見えるように一番前にします

☆さんは目が悪いけれどもほかはどこも悪くありません

走ることも同じにできます

鬼ごっこもかくれんぼもみんなとできます

 

席替えがあっても☆は定位置でクラス内に疑問がない

 

☆は森田先生がいた2年間特別を感じたことがない

特別なのはあつ子さんの最初のころとじゅん子さんだけだ

2年間だけめいっぱい学校生活を楽しんだ

幼稚園の頃の疎外感を思い出すことは皆無だった

 

 

心臓弁膜症のじゅん子さん

じゅんこさんは順番通りの席にいた

目が悪いわけじゃないし 足指が足りないわけでもないから当然だ

ちっちゃな身体で全校朝礼は一番前確定

とっても優しくて☆はすぐ友達になった

 

じゅん子さんとはしょっちゅう二人で話をした

友達から特別の仲良しになった

じゅん子さんは心臓弁膜症といって身体が大きくなると死んでしまうと言う

いつも死と向かい合わせで生きていると言う

☆は「死」がわからない

じゅん子さんは「死」と向き合っている

本当は学校にも来れないらしい

けど

じゅん子さんは学校に通って友達を作っておしゃべりをしたかった

だから両親におねだりをしたのだそうだ

 

ある日 ☆は校庭を突っ走っていた

☆は元気だ 走ることが大素手だ

そして石が見えないのだ

膝は擦り傷と打撲でいつもかさぶたがあるくらい走るのが好きだ

学校の校庭は足が引っかかるほどの石がほとんどない

だから おもいっきり走っても転ばない

☆は校庭が大好きで 用もないのに走り回った

滅多にない石につまずいてすっ飛ぶほどひっくり返った

運悪くじゅん子さんが二階から見ていた

じゅん子さんは自ら走って一番に駆けつけてくれた

「☆さん大丈夫?」

ちっちゃな身体で手をさしのべてくれる

おもわず じゅん子ちゃん、走っちゃだめ」

じゅん子さんの手は うれしそうで悲しそうで とてもあたたかい

私はほっておかれ先生はじゅん子さんを保健室へ抱いていった。

その後いつまでたってもじゅん子さんは学校には来なかった

じゅん子さんに会えたのは季節が変わってから

「わたし 生きたい」

じゅん子さんは生きるために名古屋と言うとっても遠い病院に行くことを決めたと言う

そこは病院学校があって 入院しながら勉強ができるそうだ

「病気も治して 学校にも行って また☆さんと逢いたい」

それがじゅん子さんとのお別れの言葉だった

2年生の終わりに転校していった

森田先生は じゅん子さんが生きることを望んで手術を受けるために両親と別れて遠い病院へ行きます。また会える日を楽しみにしましょう

と送り出した

4年生で亡くなったと聞く

クラスの障害児は☆一人になった

 

森田先生はじゅん子さんの家にも頻繁に訪問し励ましたという

自宅療養が望ましいが、いずれ、たぶん10才を超えられない命

ならば 生きる喜びを知ってほしい

一日でも長く生きてほしいが檻の中で死ぬために生きるのではなく

希望を胸に「生」を望んでほしい

死を覚悟した7・8才なんて胸が痛む

少しでも同じ年代の輪のなかで輝いてほしい

森田先生はそう思ったそうだ

当時 先天性の心臓弁膜症は10才を超えられない

10才ころに人の身体は大きく成長するらしい

それに心臓が耐えられないと言う

諦めることをやめたじゅん子さんは☆の星だ

 

その年度で森田先生は教師を辞めた。緑内障が進んで限界だと・・

 

 

足指4本のあつ子さん

席順2

担任は森田先生=故人

男女並んで1つの机。

横4列8人縦6列+ だった たぶん。

☆は窓から2列目の一番前で17番目じゃない

前列廊下から2番目の一番前の女子も順番じゃない

 

森田先生 ☆さんは目が悪いから黒板が良く見える席です

☆は考える、目が悪い?私見えるよ

☆は「めくら」の意味をまだよくわかっていない。

「見えない」の意味も状態」もよくわかっていない

全然わかっていない

でも☆は特別が心地いい

森; あつ子さんは足の指が4本しかありません

でもほかはみんなと変わりないです

じゅん子さんは心臓が悪いので走ることができません

じゅん子さんはおやすみも多いけれど仲良くしましょう

的なことを言った

 

さあ 休み時間はあつ子さんの足が見たい

あつ子さんは靴下をはいていない

一番前だから見学スペースは十分ある

廊下側に近いのはよそのクラスからも見学客があふれるからだ

数日間 あつ子さんは見世物になった

☆はみたい みたい みたい

けど 見えない 足の指の本数なんてわからない

靴下をはいていない足は見えるのに指の本数なんてわからない

大きい学年の生徒も並んで見に来るのに☆には見えない

具体的に「周りとの違い」を教えられる

数日もすれば見学客も来なくなる

あつ子さんは平和を手に入れた

誰も足指の本数など気にしなくなり、そのうちに違いなど忘れられた

あつ子さんはとっても元気で友達もたくさんできてただの人になった

障害者位置抜け、一抜けたー クラスの障害児は二人となった

 

あつ子さんのお父さんは☆に語る

森田先生は入学前 かなり長い時間をかけてあつ子さんの両親と掛け合ったそうだ

毎日家を訪問し あつ子さんに靴下をはかずに学校に来るように諭したという

いやがって泣くあつ子さんに 一週間がまんすれば誰も気にしなくなるからがんばろうね、と、それはもう 毎日かかさず説得に来たそうだ

根負けしたあつ子さんは約束通り入学式の翌日から靴下をはかなかった

教室は休み時間のたびに学年関係無くあつ子さんの足を見に行列ができた

「足の指が4本だって、どの指がないのかな」と話声も聞こえる

あつ子さんは下を向きながら足を隠さず耐えた

☆は満足して通り過ぎる人たちを見ていた

森田先生は人だかりがなくなるまで あつ子さんの家庭訪問を続け励ました

あつ子さんんのお父さんは「いい先生と会えて良かった」と何度も言う

一生かたわで形見の狭い思いをするのかと心配したけれど、あんなに元気に裸足で走れるようになったんだからこれからも大丈夫だろう、

最初はね、さらし者にすると聞いてほんとうに怒った

なんて人が担任になるのか、と だけど熱心でね

『自分も緑内障があって視力がどんどん落ちてきて

ほかの先生たちにいやな目で見られてつらい思いをたくさんしているけれど助けてくれる人もたくさんいてね、理解しあえることが大切だとわかったんです』

と言われて ならば賭けてみるか ということになって、あつ子も折れてね

森田先生は学校でもすごく声をかけてくれて

毎日家にも来てくれて励ましてくれて もう足のことなんて気にしなくなって・・・・・

 

☆は心からうれしい

おじさんからお話を聞いたのは小学校3年生だったけど、おじさんのお話はとてもあったかくってうれしかった

あつ子さんとは4年生のクラス替えでさよならだった

☆は結局足指4本を見られなかった 残念なのは言うまでもない

☆は正直なのだ

 

おじさんはなぜ難しいお話を☆にしてくれたのだろう

きっと☆にも元気に生き抜いてほしいと願ってくれたんだろう

乗り越えたあつ子さんとはちがい、これから先に来るであろう世の中の重圧に耐えるように、乗り越えるきっかけになるように、きっと心を込めて話してくれたのだろう。

ありがとう あつ子さんのおとうさん

 

 

スズメの観察日記から数十年あと

ワタクシ☆は母親になっている

娘は4才くらい

白内障が遺伝しななかった奇蹟の娘〈こ〉だ

その頃は茨城県牛久市に住んでいた

スズメの観察日記からずいぶんと時が流れた

 

スズメとは 木の中で大群で大騒ぎする鳥
調理前も含めて、パンやご飯が大好きな鳥
姿格好は「スズメのおやど」の絵の人に任せる

この、3行目が 人と違う
私が見ているものは本物ではない
絵本の鳥だ あるいは写真

☆の世界はほとんどが知識出あって

思い込み、偏見 固定観念 先入観 が支配している

知識を更新することを躊躇したりしなかったり

要するに偏った人間なのだ

否定する木はないしただすつもりもない

これが盲学校高等部で教わった「人の中で生き抜く生き方」なのだ

 

 


娘が拾ってきたスズメを見て驚いた
まず とてつもなく小さい

☆;ええ!こんなに小さいの
娘;そりゃ、まだ小雀だから
この時点で 言ってることにズレがある

☆;スズメってさ すごい声じゃない
庭に来るような鳥かと思った
それに、どの絵本も もっと大きく描いている
娘;お母さん、それは絵本だもの
ツグミのこと? まさかカラスじゃないよね
☆;カラスはわかる
スズメって 茶色じゃないンダね
娘;?? グレーっぽいって言えば・・
目、おかしくない
☆;そりゃ わかりきったことだ

 

目、おかしくない、と平気で言ってくれる娘は最高だ

対等である証なのだから

対等であればサポートしてくれるときも人としてお互い対等でいられるのだ