医大 理不尽と生きる知恵 15

第14話 ケーキが二つ

医大には白内障の手術と思い込んでいたから

別な病室に同い年の斜視の子が入院してきても

「私は白内障」と言い切っていた

その子の担当は斜視が専門の渥美先生

なぜか担当じゃない先生の名前は覚えている

のちのちラジオの眼科相談や、福祉センターの眼科医など

福祉関係に力を入れた先生でだが

なぜかいっぺんで覚えて忘れなかった

 

渥美先生はいつもニコニコ

たまには☆にも声を掛けてくれた

なぜ、自分の担当がこの先生じゃないのか、と

当時でも とても残念に思った

 

その斜視の子の頭文字はT

☆;斜視ってどんな病気?

T;よく見ようとすると何でも二つに見えるの

☆;お菓子もふたつあるの?

T;二つに見えるよ さわると一つしかないんだけどね

 どっちにしようと顔を動かすと一つになったりするよ

ものすごく面白い病気だ

物が二つに見えることを想像して楽しんだ

 

美味しそうなケーキが二つあって 

大きいほうをとろうとすると消えてしまう

夢にまで見てしまった

 

ポケットをたたくとビスケットが二つ

なんて歌を歌うと 斜視の歌も作れそうだと思ってニヤリ

 

自分は白内障でそんな病気じゃないから

二つに見えるなんてことはない

そんなことを病室で話しているのだから

コッケイだったに違いない

 

よく考えると 考えなくても 私も斜視だ

ものが二つに見えても良いじゃないか

当時すでに「ものを見るための右目」はもっていなかった

斜死目 と言ったところかな

 

右目を意識して使うことを覚えなかった入院生活は

両親から見れば何の成果もなく終わった。

担当医から見たらどうだったんだろう

知りたいものだ

 

☆のことだ

がんばるとケーキが二つに見えるぞ

くらいでコロッと引っかかって 

右目を使う訓練をたっぷりしたかもしれない

なにしろ 目標が定まると

それがろくでもないことでも まっしぐらだ

少少あきらめもはやい気もするが

 

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