第7話 楽しむ医者たち
いくらなんでも病院だ
平和な日がそう長く続くわけがない
月曜日が手術で火曜日が絞られ、
水曜木曜と隠れ
金曜日は朝からつかまった
朝から姿を消したのは土曜日ということになり
あまり意味がなかった気もする
月曜日か火曜だろう、朝食の直後から監視がついた
ひまなしに声を掛けられるので出られない
仕方がない、6階で遊んでいた
看護婦さんに呼ばれ診察室に行く
ほんとうに、仕方がないから ドアを開けて入った
(ここでの;医者;は虻以外の三人をさす)
4人もおんなじカッコをした先生がいる
全員白衣に黒のズボン
担当医がいるかどうかわからない
医者;こっちに来て ここに座って
虻じゃない、違う声だ
ほっと安心しておとなしく座る
医者;「口を大きく開けて」
普通の内科検診 普通に受ける
医者;これに口をつけて息を吐き出してみて
水が入った箱の前に座った
これはなんだ? 面白そうだ!
☆;ふーっ
医者;もっと大きく息をして 全部吐いてみて
☆;フーッ!!!
なにやらおおぎがたのものが息を吐くと上がってくる
面白い 面白い
頼まれもしないのに 「ふーっふーっ」
医者;あっ やんないで 一回だけでいいから
☆;ふーっ
医者;1000いかないな
虻;これじゃまた手術できないじゃないか
あの声だ。いたんだ。いやーな予感がした
虻;おまえ下手だな。かして見ろ
虻;ブーッ あれ やりすぎたかな
医者;4000超えたぞ。戻らないぞ
医者;おまえ壊したんじゃないか
みんな楽しそうに笑いながら機械をいじっている
じっと見る
なんて面白いものだろう
どうして上がってくるんだろう
医者;もう一回やってみて
虻;一回だけだぞ
☆(わかってるよ、)
ふーっ
医者;9**、出ないな。しかたがないか
虻;おまえはへただな。ハイ こっちに来て
となりに移る
虻;これをこう持って 思いっきり握ってみて
☆;グーッ!
医者;「これ・・10だぞ。」
虻;ホントに下手だな。貸して見ろ、こうやるんだ
ググー
医者;40、おまえ加減しろよ
みんな楽しそうだ。
もう一回やっても結果は同じだった
虻;次はこれを引っ張って
今度持ち出したのは自転車の空気入れみたいなものだ
☆;んー!!!!!?? 上に上がらない
虻;もういい 行っていい
ふーっと上がるの もっとやりたい
こういうのならいやみなど気にならない
いつも姉に自慢されてなれになれている
姉はちゃんと面倒を見てくれるところが違う
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
虻先生は大違いだ。
先生は4000とか40とか4が好きなんだ
・・・病棟には4号室がない・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
午後はまた5階でおやつとおしゃべり
ちゃんと私が行くのを待っていてくれる
裏階段を数回往復してちょっと早めに戻った
表から堂々と看護室の前を通る
看護婦;☆ちゃん 具合悪いの
☆;? なんでもないよ??
看護婦;まっかな顔してるから 熱測ろう
☆;走ってきたから
看護婦;走って?走ったらダメでしょう
☆;・・・・(だって イイヤ、無言が一番)
看護婦;病院なんだから静かにしてなきゃいけません
☆;・・・・(病気じゃないもん)
看護婦;とにかく真っ赤な顔してるから熱を測りなさい
☆;はい
だから見つからないようにしていたのに・・
ついつい油断をするとこうなってしまう
走れば顔に出るなんて考えもしなかった
それ以降 階段の運動会の後は息を整え落ち着かせ
忙しい夕食の時間まで6階にはもどらず
極力 看護婦さんには合わないようにした
もちろん退院まで 自由の身である限り階段は走りつづけた
姉に鍛えられた精神力は
この病院生活で十分に発揮され、磨かれた
その上、自力で活動することも身に付けてしまった
もっと言うと 大人に見つかるリスクとか
「約束」の使い方や
隠す、隠れる 逃げる技術とか
誰と仲良くするとお菓子が手に入るかとか
どんな態度が大人に人気があるか とか
見えていない階段を駆け下りる方法も
色分けすると居場所がわかることも
いいことも
7歳には余計なことも
一月の入院でたくさん身に付けた
実りの多い経験には違いない