自転車 1 タイヤは回る

父は自転車を引っ張って☆をつれて歩いた

速いのである

☆は送れまいと飛ぶように走った

送れると怖いのだ

疲れて動けない☆を載せて走ってくれる

もっと速いのである

風を切り と言っても父の後ろにひっついていないと落ちる

しっかり捕まっていても首は動くのだ

高くて速くて楽しい

自転車とは実に不思議な乗り物だ。

のれるようになっても なお 

理屈を聞かされても なお 

不思議な乗り物であることに変わりはない

自転車ってどうして倒れずに走るのだろう

かなり幼いころから不思議でならなかった

止まっている自転車は支えがないと倒れる。

それなのに人が乗ると倒れないで走る。

歩くときは手で支えて押していく。

 

道路を走る自転車を見るのがすきだった。

ほとんど視力がないのだから

こいでいることも見えていたかどうか怪しいものだ。

父の背中でもこいでいるとは思ってもいない

だって幼い頃の記憶では 自転車とは すーっと通り過ぎるモノだった

 

 

不思議な乗り物 自転車が目の前にやってきた。

父は前から乗っているのだから 置き場所を変えただけ名はずなはず

でなければ時間軸が逢わない ま、その辺はどうでも良い

玄関を作り替えたら自転車が現れた

「盗まれないように」 いつも玄関の中に置いてある。

盗まれないように 玄関の方を「自転車が入る大きさ」に

直したのかもしれない

重要なのは 自転車が☆の視界の中にやってきたことだ

 

なんにでも顔を突っ込む、手も突っ込む私は

早速自転車のとりこだ

いまだに10本指がそろっていることから察するに

車輪に手を入れないようにきつく言われていたに違いない。

 

ひまさえあれば ペダルを手で回し 後輪が回るのを楽しんだ。

私を探すなら玄関に行けばよい。

それほど あきもせず ペダルをまわしつづけた。

どういうわけか前輪はびくともしない

 

ガンガンまわしてパッと放す

後輪は勢いよく回り続ける

音が、またいい 聞いているだけでうれしい

どんなに頑張っても やはり前輪は動かない

 

乗れない! これも至極当然で 背丈が足りない

      小さいから乗れない と信じていた

 

それでも乗りたい!! そうだろう そうだろう

 

思い切って ペダルに全体重をかけて

 

自転車の下敷きになった

 

どういうわけか丈夫にできていて

さほどの怪我もなく這い出して ふと見る 

 

前輪が回ってる???? 

倒すと前輪が回るんだ!

 

もう鬼のくびを取ったほど感激で

そのあとの おろかな行為につき物の

小言など聞く耳も 反省する心も 走り去っていった。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です