医大 理不尽と生きる知恵 10

第9話 桜ご飯はいただけない

両眼グルグル巻きの状態は退屈でながーい、時間

だったはずなのにそれほどでもない

目が開けられるだけで精神は落ち着く

左眼はガーゼなどが入っていないし、目が開く空間があった

外の明るさで包帯が見える

目から5センチも離れていないのでよく見える

包帯の重なり方でできる濃淡模様を眺めていた

 

両眼ふさがれていたのは一日だと思う

翌日には手術した右目に立体にできた眼帯だった たぶん

食事はまだおかゆ、

山盛りの白いおかゆにうめぼしと+?

うめぼしは赤くてきれいだ

おかゆに混ぜてみた。

ああ、なんてきれいなんだろう

桜色に染まったおかゆはいかにも美味しそうだ

その色の美しさに大喜びで

山盛りのおかゆ全部を桜色に染めてしまった

 

つまらないプラスティックの薄緑の器に

もも色の山ができ 桜の花のようだ

ちょうど外はお花見の時期

食べずに美術館賞に浸っていたら叱られた。

看護婦;片付ける時間だから早く食べなさい

仕方が無い。美しい桜の花を一口

☆;まずい

 

見た目とは大違い とてつもなくまずい

桜色のご飯といったら ほら

桜の葉っぱでくるんだ あれ

あれしかないでしょう

見た目がそっくりになったとたん

わたしの頭は桜道明寺になっていた

看護婦;速く食べなさい

☆;いらない

看護婦;食べなかったら見てもらわなくちゃ

☆;?

看護婦;具合は悪くないのね

☆;うん

何を言われているかちんぷんかんぷん

看護婦;だったら速く食べなさい

そういわれたって 吐き出すほどまずい

 

母がやってきた。

看護婦さんになにやら言われたらしく

母;さっさと食べちゃいなさい

☆;美味しくない

母;自分でこんなにしたんでしょう。食べちゃいなさい

☆;そうだけど 美味しくない お母さん食べて

母;あなたの食事でしょう 

☆;まずい

母;自分の責任でしょう

  まずいからって押しつけるものじゃない

   看護婦さんが来るから ガマンして早く食べちゃいなさい

手伝う気はさらさらない と伝わってくる

そんなまずそうなものいらない とも伝わってくる

何しろ一口、口に入れるとムカーッと吐き気が襲う

昼までがんばってどうにかほとんど全部食べずにすんだ。

お昼は美味しくいただいたし

一日中桜餅で頭がいっぱいで ひまな記憶がない

 

食べ具合だけで体調を判断しようというのが間違っている

どうしようもない、 予想外のことだってありうるんだから

あの桜餅風ご飯が 道明寺の味なら

おかわりがほしいくらいだったはず

 

うめぼしのご飯がまずいというより

想像した味とあまりにかけ離れていただけだった

 

桜道明寺色のご飯は二度と作らないけど

「美味しい」梅干も 梅干のおにぎりも好き

 

 

 

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