医大 理不尽と生きる知恵 4

 

第3話 あめだま

先生はごくごく普通にやさしい先生だった

お兄さんのようではない

:あめだま:を持ったおじさん というところだろうか

 

診察が終わると話しはじめた

「☆ちゃんは手術をするんだよ」

「ハイ」

「先生の言うこと聞けるね」

「ハイ」

「☆ちゃんはすなおでいい子だね」

「にこー」

 

「素直でいい子だ」と誉められて大満足だ。

☆は誉められるとお菓子をいただいたと同じにうれしい

すっかりご機嫌になって

「私手術するの」と得意になって触れ回った

遠足に行く気分だった。

 

斜視は簡単な手術と言っても比べる対象の問題で

遠足と同レベルに待つものではない

しかも簡単かどうかは医者の問題であって

患者にとっては失敗すればどっちも同じだ

手術という新単語が娯楽ではないことを

医者はきちっと説明をするべきだ

7歳にもなれば理解できるし

必要であるとわかれば、我慢の限界があるにしろ

一所懸命こらえようと努力できる

 

飴玉のおじさんは 釣った相手が壊れてもかまわない

甘い言葉でだましても目的は達成できる

餌に釣られた魚は 水を離れると大暴れする

命をかけた抵抗だ

飴玉で釣られた子どもだって さかなと大差ない

 

虻先生は 子どもを侮(あなど)っていた

子どもを信頼していない

子どもを バカだと思っていた

おそらく 子どもが嫌いなのだろう

それに、壊れたって かまわないのだろう

 

素直でいい子だと 誉められて

朝から晩まで手術に行くのが待ちどおしい。

1日2日先の「未知の遠足」へ夢をはせるのだった

 

 

 

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