ニワトリ
私の子供時代は家に鶏がいた
県庁所在地のど真ん中なのに たくさん買っていた
結核の父が栄養豊富なタマゴを毎日食べるためである
鶏は苦手だ
苦労してミミズを取って食べさせようとすると
われ先にと集団で飛びついてくる
たまらず投げ出すと 大群でミミズの方に行ってしまう
怖い上に薄情だ
いいのは姿だけじゃないか
・・・・・☆ オトリ ☆・・・・・
私はタマゴを取りに行くたびに鶏に襲われた
5・6才くらいからやらされていた と記憶している
小屋に入る時はサッと入らなければならない
入り方が下手だ、と何度も叱られた
気をつけて入ったらタマゴを探す
タマゴはニワトリの下にある
どのメスも私を見ると威嚇する
顔を向けるだけで羽を広げて こっちへくるな、という
それでも 手ぶらで帰ると叱られるから がんばる
何とか(こわごわ)鶏に近づくと 今度は攻撃されて
小屋の隅に追い詰められてしまう
必死にこらえるだけで、たいてい身動きできない
その頃を見計らって 「今日もか・・・」と
誰か(たいていは姉)がタマゴを取りに来るのだ
助けに来てくれるのではない
「もたもたしてるから鶏にまでバカにされる」
鶏に取り囲まれた私を見てつぶやきながら
無防備なタマゴをさっさと取っていく
今日も手ぶらのタマゴ鳥(取り)
鶏は昼間行くと「どうぞどうぞ」と立ち上がって巣を見せてくれる
今置いてきた餌の方が気になるようだ
☆の辞書 → オトリ=鶏小屋の我